「キョービの高校・小学生事情」を教えてくれる、甥からのお便りです。豪&淳は、子供のいない院長のお友達みたいなもの。 毎月交互に話題をお送りします。
高2 豪 いつもと違う夏
去る六月下旬の日曜日、僕は友人とプール監視員のバイトの面接を受けに行くことになった。初めてのバイトの面接ということもあり緊張しながら世田谷の厚生年金プールセンターへ向かう。履歴書も前日に書いたのだが、書いてみると自分が人生において何事も成し得ていないことが明白な事実として浮かび上がり明日が心配になる。学歴や職歴、資格など殆ど書けることがないのだ。しかしまあ皆そんなもんだろうと高をくくり、面接室に足を踏み入れる。結果はあっ気ないものだった。
二人の面接官(一人はTシャツに半パンというラフな姿の中年、もう一人はキチンとしたスーツ姿の青年だった。)の履歴書に関する、幾つかの他愛のない質問に答えるとその場で採用が決定されたのだ。その後は時給の説明やら契約書等を渡され、七月の研修会に来てくださいとのことで終わった。ただ一つ印象に残ったのは、去り際に中年の面接官が放った「お金が欲しいんでしょ?だったらちゃんと働かなくちゃ」という台詞と彼の薄笑いだった。
プールの監視と一口に言っても色々ある。よく目にするのは高い椅子の上に座ってメガホンを持ち注意するT(タワー)という業務だろう。
ちなみに僕が好きなのはC(コントロール)、いわゆる場内放送をする仕事だ。放送文を上手に読みきれると結構気持ち良いからである。(涼しい部屋で休憩できるというのが本当の理由であるがそれは秘密だ)他にも様々な業務がありそれを三十分位のペースでローテーションしていく。
こんなようなことを僕らは研修、実務を通して学んでいった。
ちょうど仕事にも慣れ始めた三回目の勤務で事件が起こった。プールサイドで瞼を切り、お泣きしている子に誰も気付かなかったというのだ。しかもそれは(ここが最も重要な点であるが)僕の担当区域だった。
結果その子は病院へ直行し三針も縫うことになったという。当然僕は現場主任から注意を受けたがそれ以上に僕自身に悩ましい、ある種罪悪感の生じる問題だった。もちろん僕がすぐ発見したからといってその怪我が軽くなったかはわからない。しかしその子やその家族の信頼を裏切ったというのは事実なのだ。
この事件以降、僕はこの仕事を軽視するのを止め真面目に働くようになった。
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