お知らせ

第40回 日本頭痛学会総会 1日目のまとめ(平成24年11月16日)

I.特別企画1 新しい慢性頭痛の診療ガイドライン:公開直前討論

■単一遺伝子による片頭痛

家族性片頭痛は、1~3までだったが5まで増える。
CADASIL,MELAS,Osler-Rendu-Weber 症候群は従来同様。

■クモ膜下出血

CT MRIならFLAIR。雷鳴様頭痛なら、腰椎穿刺必要。
4日経過するとCTでは陰性に。
2割は診断されず、1割は受診しても。

■小児頭痛

イブ、カロナールが標準。
イミグラン点鼻、マクサルト(リザトリプタン)、ゾーミッグ。
予防薬は、トピナ、ペリアクチン(シプロヘプタジン)

■疼痛とは?

三叉神経血管系、下降性疼痛抑制系、ペプタイド
CSD→神経原性炎症
※参考  http://www.eisai.jp/medical/products/maxalt/guidance/patient.html
三叉神経血管説 片頭痛の原因として有力視されている説。

まず、血小板からセロトニンが放出されて脳血管の収縮が起り、脳血流が低下して閃輝暗点などの前兆症状が発現します。

また、引き続き起るセロトニンの枯渇状態により脳血管が拡張し、脳の大きな血管や脳を覆う硬膜などの血管周囲に分布している三叉神経が刺激されて神経原性炎症が起き、痛みを感じるという説が三叉神経血管説。

三叉神経の末端からは、刺激によりCGRPカルシトニン遺伝子関連ペプチドなどの血管作動性ペプチドが放出されます。

また、カルシトニン遺伝子関連ペプチドは、血小板や肥満細胞を活性化して炎症性物質を血管周囲に放出し、放出された炎症性物質によって痛みが引き起こるといわれています。

セロトニン受容体には、セロトニン1~セロトニン7の7種類あります。

セロトニン1受容体とセロトニン2受容体は、脳血管の収縮に関連していますが、脳血管にはセロトニン1受容体が多く存在しています。

また、セロトニン1受容体のサブタイプの存在が明らかになり、サブタイプのうち、セロトニン1Bとセロトニン1Dの受容体が脳血管の収縮に関連しているといわれています。

さらに、三叉神経末端には、セロトニン1D受容体が存在し、セロトニン1D受容体とセロトニンとの結合により、カルシトニン遺伝子関連ペプチドなどの血管作動性ペプチドの放出が抑制されることがわかっています。

■予後

片頭痛の3%は慢性化。
肥満、SAS/いびき、ストレス、顎関節症は、変更(治療)可能な因子。

■脳卒中との関連 危険因子として

前兆を伴う片頭痛MA 45歳未満の女性。テント下でMRIにて虚血が多い。
前兆がなければ変わらない。
喫煙・ピル服用で危険が増える。
相対危険度 MA+喫煙で9.03 MA+ピルで7.02。

■片頭痛治療・薬物乱用頭痛

・ピル MAでは禁忌
海外でも同様
ただし、5年間前兆なく、35歳未満なら、相対的に使用可能。
若年女性のCVDは5-10/10万人。

・複数のトリプタン使い分け
効きだすまでの時間と、持続時間で。
参考  http://pipisuke.blog109.fc2.com/blog-entry-42.html
タイミング 軽いうち・1時間以内、前兆で使ってもいいが、早すぎると逆に効かない

・そのほかの急性期治療薬
デキサメタゾンv

・インデラル(プロプラノロール)
妊娠でも安全。20~60mg/日。
マクサルトとは併用禁忌、気管支喘息で禁忌。
2012年8月から公知申請で使用可能。
小児ではだめ。

・デパケン
低用量でだめなら増やしても効かない。600mgまで。
妊娠の可能性があれば使わない。
(インデラルが使用可能になったことから、当院でも今後は使用頻度が減りそうです)

・薬物乱用頭痛MOH

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*参考 薬物乱用頭痛 の改訂基準
付録  A8.2 薬物乱用頭痛の診断基準
A 頭痛は1ヵ月に15日以上存在する。
B 8.2 のサブフォームで規定される 1種類以上の急性期・対症的治療薬を3ヵ月を超えて定期的に乱用している
1. 3ヵ月以上の期間、定期的に1ヵ月10日以上エルゴタミン、トリプタン、オピオイド、または複合鎮痛薬を使用している。
2. 単一成分の鎮痛薬、あるいは、単一では乱用には該当しないエルゴタミン、トリプタン、オピオイドのいずれかの組み合わせで合計月に15日以上の頻度で3ヵ月を超えて使用している。
C 頭痛は薬物乱用により発現したか,著明に悪化している


頻度 1~2%有病率。
女性が70%。
頭痛外来では30~50%以上。
説明、助言が有効。
即時中止の方が、再発率が低い。(データは乏しい)
予防薬を早期から用いる。トピナ、トリプタ。
再発は1年以内が多いので1年は観察。

フロアから

  • 内膜症のある人では、ピルは?
    内膜症は不妊につながるので、その治療を優先する。
  • 予防薬の中止は? これは決まりはない。漫然は不要。
  • トラムセットは?
    非癌性疼痛で適応。薬物・アルコール依存あれば避けた方がいい。
    (どちらかというと、リリカの代わりに視床痛や神経痛で用いる薬かと)
  • 女性ではβブロッカーからが流れ?予防薬。
    デパケンは多嚢胞性卵巣症候群(PCO)と関連するデータあり。

■変容型片頭痛と緊張型頭痛

・実は鑑別は困難。

*参考


付録  A 1.5.1  慢性片頭痛 ( Appendix 1.5.1 Chronic migraine )


A 頭痛(緊張型または片頭痛あるいはその両方)が月に 15 日以上の頻度で3ヵ月以上続く*

B 1.1 前兆のない片頭痛の診断基準をみたす頭痛発作を 少なくとも 5回は経験している患者におこった頭痛。

C 少なくとも3ヵ月にわたり、次のC1またはC2あるいはその両方を満たす頭痛が月に8日以上ある。すなわち、前兆のない片頭痛の痛みの特徴と随伴症状がある。
1. 以下のa~d のうちの少なくとも2つを満たす。
(a) 片側性
(b) 拍動性
(c) 痛みの程度は中程度または重度
(d) 日常的な動作(歩行や階段昇降など)により頭痛が増悪する、あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける。そして、以下のaまたはbの少なくともひとつ。
(a) 悪心または嘔吐(あるいはその両方)
(b) 光過敏 および 音過敏
2.上記 C1の頭痛発作に進展することが推定される場合にトリプタン 又はエルゴタミン製剤による治療により頭痛が軽減する。

D 薬物乱用が存在せず※、かつ、他の疾患によらない※

*頻繁におこる頭痛の特徴を明確にするためには、通常、少なくとも 1ヶ月は日々の頭痛と随伴症状の性状を記録する頭痛ダイアリーをつける必要がある。ダイアリーのサンプルは Web から入手できる(http://www.i-h-s.org

※薬物乱用は 8.2薬物乱用頭痛の項に従って定義される。
※※病歴および身体所見・神経所見より頭痛分類5~12を否定できる、または、病歴あるいは身体所見・神経所見よりこれらの疾患が疑われるが、適切な検査により除外できる、または、これらの疾患が存在しても、初発時の発作と当該疾患とは時間的に一致しない。


*参考 付録の出る前
慢性連日性頭痛はどう診察するのか?
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推奨のグレード C
背景・目的
1988年に国際頭痛学会が診断基準を発表して以来、特に毎日のように頭痛が出現し急性期薬物を頻回に使用している症例をどのように診断、分類するのか議論が続いている。慢性連日性頭痛はSilbersteinらにより提唱された頭痛分類で、1日に4時間以上の頭痛が1ヶ月に15日間以上続く頭痛とされ主に米国を中心として世界的に流布しているが、ICHD-Ⅱには慢性連日性頭痛という病名は採用されなかった。しかし毎日あるいは毎日のように続く重症の頭痛患者を診断する際に、国際頭痛学会の診断基準では分類しにくいことが多く、新たな基準が必要と考えられてきた。

解説・エビデンス
Silbersteinらは1994年に慢性連日性頭痛を次の4型に分けた。
1. 変容性片頭痛(transformed migraine:TM)
2. 慢性緊張型頭痛(chronic tension-type headache:CTTH)
3. 新規発症持続性連日性頭痛(new daily persistent headache:NDPH)
4. 持続性片側頭痛(hemicrania continua: HC )
現在ではこの分類が世界的に流布している。1日に4時間以上というのは群発頭痛を除外するためであり、頭痛の持続期間に関しては、現在まで1ヶ月、3ヶ月 6ヶ月、1年以上と様々な文献があるが、ICHD-Ⅱの慢性片頭痛、新規発症持続性連日性頭痛、持続性片側頭痛の診断基準に準じ、3ヶ月を超えてとするのが良いと思われる。またその分類で特に変容性片頭痛と慢性緊張型頭痛の鑑別が困難である場合があるが、もともとICHD-Ⅱの診断基準を満たす片頭痛があり、頭痛の強度は減少するものの頻度が増加した頭痛と考える事が出来れば、変容性片頭痛と診断してよいものと思われる。
慢性連日性頭痛の病名は、ICHD-Ⅱでは採用されていない。ICHD-Ⅱの日本語版 2)に記載してあるように、変容性片頭痛はICHD-Ⅱでは1.5.1「慢性片頭痛」か、8.2「薬物乱用頭痛」プラス「片頭痛」のいずれかである。もし鎮痛薬、エルゴタミン、トリプタンの乱用がある場合には、初診時には(1)片頭痛、(2)慢性片頭痛疑い、(3)薬物乱用頭痛疑いの 3つの診断がつけられ、その後2ヶ月間薬物を中止して頭痛が軽快すれば「薬物乱用頭痛」、中止しても片頭痛が慢性的に起こる場合に、「慢性片頭痛」と診断される。


トリプタン有効。
病歴確認が重要。
・緊張型頭痛の治療
鎮痛剤はW3回以下に。
抗うつ剤の効果は3ヶ月でみる。

・群発頭痛とTAC
群発 ワソラン(べラパミル)360mg、プレドニゾロン 適応外だが保険診療で認められた。
発作性片側頭痛 インドメタシンも同様。

・その他の一次性頭痛 ICHD-II

4. その他の一次性頭痛
o 4.4.2 オルガスム時頭痛
o 4.5 睡眠時頭痛
o 4.6 一次性雷鳴頭痛
o 4.7 持続性片側頭痛 Hemicrania continua
o 4.8. 新規発症持続性連日性頭痛 New daily-persistent headache (NDPH)

・性行為関連頭痛でトリプタンが追加。

*参考
睡眠時頭痛はどのように診断し治療するか?
1 診断
睡眠時頭痛は、国際頭痛分類第2版(ICHD-II )に準拠して診断する。
2 治療
カフェイン、リチウム、インドメタシンなどが有効である
推奨のグレード 診断:A 治療:C
背景・目的
睡眠時頭痛はまれな疾患で、「目覚まし頭痛」ともいわれ、1988年にRaskinによってはじめて報告されて以来現在までおよそ90例に及ぶ。

解説・エビデンス
1.診断
ICHD-II による診断基準 :
A. B~Dを満たす鈍い頭痛
B. 睡眠中にのみ起こり、覚醒をきたす
C. 次の特徴のうち少なくとも2項目を満たす
1.1ヶ月あたり15回を越えて起こる
2. 覚醒後15分以上持続する
3. 初発年齢は50歳以上
D. 自律神経症状がなく、悪心、光過敏、または音過敏のうち2つ以上を示さない
E. その他の疾患によらない
これまでの報告は症例報告がほとんどであるが以下のような特徴があげられる。男女比は1:1.5 と女性に多く、平均の発症年齢は50~60歳である。頭痛の程度は軽度~中等度である. 両側性の鈍痛のことが多い。持続時間は15 ~180分で、発作頻度は1~2 回/日で多くは睡眠後3時間の午前1~3時に出現する。画像診断によって二次性頭痛を鑑別することが重要である。鑑別診断として、睡眠時におこる一次性頭痛である群発頭痛 、三叉神経・自律神経性頭痛(発作性片側頭痛、SUNCT 症候群)、持続性片側頭痛などがあげられる。
2.治療
薬物治療としては、カフェイン、リチウム、インドメタシンなどによる効果が報告されている。

・一次性雷鳴頭痛
除外診断
成人女性に多い
二次性雷鳴頭痛はいろいろ
特にRCVS 85%が雷鳴 SSRIとの関連 PLESだと予後悪い
*参考
一次性雷鳴頭痛はどのように診断し治療するか?
1.診断
1次性雷鳴頭痛は国際頭痛分類第2版 (ICHD-II) に準拠して診断する
2.治療
二次性に雷鳴頭痛を起こしうる疾患の鑑別が最も重要で、確立された治療法は明らかでない。
推奨のグレード 診断:A  治療:C
背景・目的
雷鳴頭痛の治療は原因疾患を鑑別するところから出発し、的確な診断ならびに専門医による治療が必要である.鑑別診断力の向上が目的である。

解説・エビデンス
1.診断
一次性雷鳴頭痛の診断基準
A. BおよびCを満たす重度の頭痛
B. 以下の特徴を両方満たす
C.突然に出現し、 1分未満で痛みの強さがピークに達する
D.1時間~10日間持続する
E.発症後の数週または数ヶ月にわたって、定期的な再発はない
F.その他の疾患によらない
2.治療
脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血、未破裂嚢状脳動脈瘤、頸動脈または椎骨動脈の解離、脳内出血、脳梗塞、脳静脈洞血栓症、下垂体卒中は必ず否定しなければならない.また、中枢性神経系血管炎、可逆性良性中枢神経系アンギオパチー、第三脳室コロイド嚢胞、低髄液圧、急性副鼻腔炎(特に気圧障害)も原因となる.二次性に雷鳴頭痛を起こしうる疾患の鑑別が最も重要で、治療も疾患に応じて行う。一次性電鳴頭痛とは器質性原因疾患のすべてが否定された場合のみに限るが、確立された治療法は明らかでない。
以下に二次性に雷鳴頭痛を起こす疾患の特徴を示す。
(1) 脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血:くも膜下出血の頭痛の典型的な症状は「今まで経験したことがない突然の激しい頭痛」である。問診上、このような頭痛患者がいれば、くも膜下出血を強く疑わなければならない。くも膜下出血の大発作をきたす前に少量な出血(マイナーリーク)を20 %前後の症例で認めることがある。このような症例を正しく診断できた場合と誤診した場合では予後に大きな差が認められるため注意が必要である。マイナーリークの症状は突然の頭痛が最も多いが、悪心・嘔吐、意識消失、めまいが加わってくることもある。
(2) 未破裂嚢状動脈瘤:頭痛は非特異的で慢性的な頭痛の方が多いが、突然の激しい頭痛をきたすこともある。動脈瘤の大きさが10mm以上のことが多く、動脈瘤の血栓化や局所的な髄膜刺激が原因とされる。脳神経麻痺、錐体路症状、視力・視野障害などを伴うこともある.特に動眼神経麻痺を合併するときには注意を要する。内頸動脈 - 後交通動脈分岐部、脳底動脈-上小脳動脈分岐部、脳底動脈先端部に発生した動脈瘤が増大し、動眼神経を圧迫することが原因である。MRA 、CTA、脳血管撮影での脳血管の精査が必要である。
(3) 頸動脈または椎骨動脈の解離による頭痛:頸動脈解離では前頭部痛、椎骨動脈解離では後頭部痛が多い。頭痛、頸部痛ともに解離と同側に認められることが多い。頭痛の鑑別とともに頚動脈の雑音、眼症状、下位脳神経麻痺、ホルネル症候群などを伴っていないか調べなければならない。早急にMRI、MR-angiography (MRA) 、超音波検査、CT-angiography、脳血管撮影などで動脈解離を検索する必要がある。
(4) 脳梗塞による頭痛:出血型脳卒中に比べて突然の頭痛や随伴する嘔吐は少ない。主幹動脈閉塞性脳梗塞に頭痛は多い傾向がある。
(5) 脳内出血による頭痛:小脳出血と脳葉出血患者に頭痛は多く見られる。頭痛は出血と同側で、小脳出血では後頭部痛が多い。脳内出血の血腫がくも膜下腔に波及すると、髄膜刺激症状で頭痛を呈しやすい。
(6) 脳静脈洞血栓による頭痛:雷鳴頭痛とともに嘔吐、意識障害、てんかん発作、うっ血乳頭、運動障害などの症状が随伴することが多い。CT、MRI、MRAが有用である。
(7) 下垂体卒中による頭痛:突然の頭痛とともに視野障害、動眼・滑車・外転神経麻痺、嘔吐、複視、発熱などの症状を随伴する場合は下垂体卒中を考えなければならない。CTよりもMRI が有用である。

フロアから

  • いわゆる変容性片頭痛の現代での分類は?
    慢性片頭痛と慢性緊張型頭痛に分類される。

*参考
III 緊張型頭痛
III-2 緊張型頭痛はどのように診断するか
推 奨 【グレードA】
緊張型頭痛は、国際頭痛分類第2版(ICHD-II)の診断基準に準拠して診断する
【解説・エビデンス】
以下に緊張型頭痛の診断基準(日本語版)を示す。
各緊張型頭痛は主にその発症頻度(A項)と持続時間(B項)で診断される。
そして以下の項目をみたすものである。
C.頭痛は以下の特徴の少なくとも2項目を満たす
1.両側性
2.性状は圧迫感または締め付け感(非拍動性)
3.強さは軽度~中等度
4.歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない
D.以下の両方を満たす
1.悪心や嘔吐はない(食欲不振を伴うことはある)
2.光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ
E.その他の疾患によらない

2.1稀発反復性緊張型頭痛は、1ヵ月に1日未満(年間12日未満)の頻度で生じる頭痛
2.2頻発反復性緊張型頭痛は、1ヵ月に1日以上、15日未満(年間12日以上180日未満)の頻度生じる頭痛
2.3慢性緊張型頭痛は、1ヵ月に15日以上(年間180日以上)の頻度生じる頭痛
2.4緊張型頭痛の疑いは、緊張型頭痛の診断基準をひとつだけみたさず、かつ片頭痛でないものである。

一般臨床家からの意見では片頭痛と緊張型頭痛は重症度や悪心・嘔吐、光・音過敏の有無などからは鑑別できない場合がしばしばあり、緊張型頭痛と片頭痛の移行型あるいは中間型とも考えられる頭痛の存在が問題となる。これらの論議に加え、古くから問題となっている筋緊張とこの分類の頭痛の問題がいまだ解決されていない点も問題という意見も散見される(「III/4。緊張型頭痛の病態はどのように理解されているのか」参照)。また、ICHD-Iの緊張型頭痛の基準では陰性所見が多く採用されているため、それ以外の頭痛も拾ってしまうという問題点も提起されてきた。

ICHD-Iの欠点に鑑み、ICHD-IIでは慢性片頭痛と緊張型頭痛の疑いの項目を盛り込みこの問題をほぼ解決したと考えられる。
さらに、ICHD-IIでは反復性緊張型頭痛を、頭痛の頻度が月あたり1回未満の稀発型と頻発型にさらに細分されている。稀発型が個人に及ぼす影響は比較的わずかなものであるため、医療関係者からあまり大きくは注目されていないが、しかし、頻繁に罹患することにより、時として高価な薬剤や予防治療薬が必要となるほどの支障をきたすことがある。また、慢性型に分類される頭痛は生活の質(QOL)を大きく低下させ、高度の障害を惹き起こす深刻な疾患である。

III-6 緊張型頭痛の急性期(頭痛時、頓服)治療にはどのような種類があり、どの程度有効か。またどのように使い分けるか
推 奨 【グレードB】
緊張型頭痛の急性期(頓挫)療法には薬物療法と非薬物療法がある。治療法の種類やその内容を十分に知った上で治療する必要がある。有効性に関しては治療法により異なるが、RCTにおいて十分に有効性が証明されている治療法は、鎮痛薬、NSAIDsである。また病型や病態に則した治療薬の選択が望まれるが、治療薬の使い分けに関するエビデンスは少ない。頭痛発作時には急性期療法を使用し、慢性型緊張型頭痛には予防療法を併用することが望ましい。
【背景・目的】
従来から緊張型頭痛の急性期療法として、種々の薬物療法と非薬物療法が臨床の場では用いられているが、それらの有効性については必ずしも十分なエビデンスがあるとは言えない。緊張型頭痛の急性期治療法を列挙し、エビデンスに基づいた有効性を示す。しかし、その使い分けについては明確に示されていない。エビデンスに基づいた治療薬の使い分けを提示する。
【解説・エビデンス】
緊張型頭痛の急性期治療には薬物療法と非薬物療法があり、以下に詳細を示す
1.鎮痛薬およびNSAIDs・カフェイン・抗うつ薬
1)鎮痛薬およびNSAIDs(多数あるが、例えばアスピリン500~1000mg、アセトアミノフェン500mg、イブプロフェン200mg頓用など)
2)カフェイン(100~300mg頓用)
3)抗うつ薬(例 アミトリプチリン10~25mg)
2.抗不安薬・筋弛緩薬
1)抗不安薬(例 ジアゼパム2~5mg、エチゾラム0.5~1mg)
2)筋弛緩薬
A.チザニジン(テルネリン®)3~6mg/日
B.エペリゾン:eperisone(ミオナール®)150mg/日
C.ダントロレン:dantrolene(ダントリウム®)25~150mg/日
3.スマトリプタン
4.ボツリヌス毒素
【非薬物療法】
治療の中心となる薬物治療について述べれば、 保険適応制限を別にしてNSAIDの使用が最も勧められる。しかし、胃腸障害、造血器障害などの副作用があるため、本邦における薬剤の至適用量は欧米と比較して少ない。また、NSAIDの慢性的使用による更なる頭痛誘発が問題となる。さらに、カフェインの併用はエビデンスがあるものと結論されるが、消化器系副作用が考慮されるべきである。カフェイン・抗うつ薬については有用との数多くの報告があるが、そもそも緊張型頭痛を病型別に分類しないで検討している点に留意すべきであり、急性期治療としての有用性については疑問が残る。また、頭痛体操やバイオフィードバックについては、エビデンスの有無にかかわらず考慮されるべきものであろう。ボツリヌス毒素は保険適応制限がある。
一方、緊張型頭痛の治療薬の使い分けに関するエビデンスは乏しい。しかし、緊張型頭痛であっても、頻繁に罹患することにより、時として高価な薬剤や予防治療薬が必要となることがある。さらに慢性型頭痛は生活の質(QOL)を大きく低下させ、高度の障害を惹き起こす深刻な疾患であり、治療が必要となることは個人的、社会的見地からも当然のこととなり、経済的費用負担を伴う。慢性緊張型頭痛においては中枢性疼痛メカニズムがより重要な役割を果たしているのに対し、稀発反復性緊張型頭痛、頻発反復性緊張型頭痛については末梢性疼痛メカニズムが役割を果たしている可能性が最も高い。従って、このような患者群に対しては予防療法が有用であり、その使い分けが必要である。
82人の緊張型頭痛を対象にしたオープンラベル試験で、amitriptylineは慢性緊張型頭痛には有効であるが、発作性緊張型頭痛には有効でないことが示されている。この検討からもわかるとおり、一般的には慢性緊張型頭痛以外には予防療法は必要ないであろう。しかし、頻発反復性緊張型頭痛では、鎮痛剤の乱用や日常生活に対する支障度を考慮にすると、予防薬の適応がある場合がある。

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白鳥内科医院

〒430-0814 静岡県浜松市南区恩地町192
電話:053-427-0007  FAX:053-427-0005


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物忘れ(認知症)外来
頭痛外来(6歳以上の小児を含みます)
パーキンソン病とその類縁疾患


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月曜日・火曜日・金曜日
9:10~11:00
15:30~17:30
土曜日・日曜日・祝日
9:10~11:00

学会、長期・短期研修など、水・木以外の休診日は、診療日時案内をご覧ください。

現在、予約は再診患者さんで若干込み合っている状態です。
恐れ入りますが、初めての方は、予約無しで、お早目の受診をお願いいたします。
お越しになる際は、必ず、時間に余裕をもっていらしてください。
認知症の診療には、多くの時間と手間がかかるからです。

また、再診で、予約の日に来られなかった方も、予約無しでお願いします。
混乱を避けるため、予約日時の取り直しは一切ご遠慮いただいております。

2017年から、1時間当たりの予約患者さんの数を減らし、以前に比べると、はるかに待ち時間は少なくなりました。


休診日

水曜・木曜
(毎週日曜・祝日診療)


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